小泉防衛相「与党と緊密に連携」…自民・維新、安保3文書の年内改定へ実務者協議開始控える

東京
小泉防衛相は23日午前、衆議院分館1階ロビーで行われた閣議後記者会見で、国家安全保障戦略など安保3文書の年内改定に関し「今後も、与党と緊密に連携していきたいと考えています」と述べた。与党・自民党と連立パートナーの日本維新の会が来月から実務者協議を始める方向となったとの質問に答えた。2022年12月に定めた現行3文書は、2027年度に防衛関連予算を国内総生産(GDP)の2%水準に引き上げ、5年間で防衛力整備に43兆円程度を充てるとしている。自民党が今年6月に政府に提出した提言は、北大西洋条約機構(NATO)と韓国が掲げる対GDP比3.5%を引き、予算確保と5年以内の防衛力変革を求めた。
小泉防衛相、事務方に与党との意思疎通を指示
閣議後の会見は現地時間午前8時42分に始まり、8時47分に終わった。防衛省が公開した会見録によると、ある記者は年内の3文書改定に向けて自民・維新両党が実務者による協議を来月から始める方向になったとして、年末まで2か月ほどとなる中で協議に何を期待するかを尋ねた。
小泉防衛相は「防衛省の事務方にも与党としっかりコミュニケーションを取るように私から指示をしています」と答えた。続けて、与党からも厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、わが国の独立と平和を守り抜くための提言をいただいたと述べ、「今後も、与党と緊密に連携していきたいと考えています」と語った。
防衛相は、改定案に盛り込む防衛費の水準や日程、協議の相手や回数は明らかにしなかった。会見では3文書のほか、中国の砂漠にある自衛隊機の形をした構造物、ロシア外務省による日本企業のドローン販売批判、沖縄のキャンプ・シュワブのヘリコプター着陸帯閉鎖、フィンランド国防相の来日日程も取り上げられた。
現行3文書、2027年度GDP比2%と5年間43兆円を明記
安保3文書は、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画を指す。3文書は2022年12月にそろって策定された。防衛省が発行した令和6年版防衛白書は、国家安全保障戦略の予算目標について、2027年度に防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を合わせ、その予算水準がGDP(2022年度実績見込み、約560兆円)の2%(11兆円程度)に達するよう所要の措置を講じることとしたと説明している。
白書は、このうち防衛力整備計画対象経費が2027年度に8兆9千億円程度、研究開発、公共インフラ整備、サイバー安全保障、同志国の抑止力向上のための国際協力など総合的な防衛体制の強化のための経費が1兆円程度になると見込んだ。沖縄に関する特別行動委員会(SACO)・在日米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分は0.2兆円程度、海上保安庁予算や国連平和維持活動(PKO)関連経費など他省庁所管分は0.9兆円程度とした。基準となるGDPには、3文書を策定した2022年度の実績見込み値を用いた。
防衛力整備計画第13章「所要経費等」は、2023年度から2027年度までの5年間の計画実施に必要な防衛力整備の水準を「43兆円程度」と定めた。この期間に各年度の予算に計上される防衛関係費は40兆5千億円程度で、2027年度分は8兆9千億円程度だ。新たに必要となる事業に係る契約額(物件費)は43兆5千億円程度とした。2027年度以降に防衛力を安定的に維持するための財源としては、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の創設、税制措置を挙げた。
防衛省の概要資料は、この経費をスタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、機動展開能力・国民保護、指揮統制・情報関連機能、持続性・強靱性の7分野に分けた。長射程ミサイルなどスタンド・オフ防衛能力に約5兆円、弾薬・誘導弾の整備に約2兆円(他分野を含め約5兆円)、装備品の維持整備・可動確保に約9兆円、施設の強靱化に約4兆円、基地対策に約2兆6千億円、教育訓練費・燃料費などに約4兆円が配分された。研究開発は約1兆円で、他分野に含まれる分を合わせると約3兆5千億円となる。スタンド・オフ防衛能力は、2027年度までに製造態勢を整えつつ研究開発と量産を前倒しして実践的な運用能力を獲得し、おおむね10年後までに射程を延伸したミサイルを必要数保有する日程が組まれた。弾薬の項目には、必要数量が不足している状況を解消するため早期に弾薬・誘導弾の必要数量を整備するとの目標が付された。概要資料は、金額は精査・調整中であり変更があり得ると注記している。
令和7年版防衛白書は、2025年度の防衛力整備計画対象経費と補完する取組の経費を合わせた額を9兆9千億円、2022年度GDP比約1.8%と集計した。
高市首相、2%の時期を前倒しし改定目標を2026年に設定
枠組みを組み直したのは高市早苗首相だ。防衛省が掲載した高市首相の2025年10月24日の所信表明演説の抜粋によると、首相は2022年12月の国家安全保障戦略をはじめとする「3文書」策定以降、新しい戦い方の顕在化など様々な安全保障環境の変化も見られると指摘した。
首相は、わが国として主体的に防衛力の抜本的強化を進めることが必要だとし、国家安全保障戦略に定める「対GDP比2%水準」について、補正予算と合わせて今年度中に前倒しして措置を講じると表明した。2027年度とされていた目標時期を2025年度に前倒しする方針だ。首相は、来年中に「3文書」を改定することを目指して検討を開始するとも述べた。
連立の構図も改定を後押しした。自民党が2025年11月21日に党ホームページに掲載した記事によると、連立を組んだ日本維新の会と自民党の間で交わした合意文書には、3文書改定の時期を前倒しする内容と、防衛装備移転三原則の「5類型」撤廃が盛り込まれた。同記事は、2022年度から2027年度にかけてGDP比2%水準を目指していた安全保障関連予算を、政府・与党がまとめる総合経済対策で補正予算と合わせて今年度中に前倒しすると明記したと説明した。自民党安全保障調査会はその前日の11月20日、防衛省から2022年に改定された戦略3文書の内容と今後の課題を聞く勉強会を開いた。
防衛省の変革推進本部、9回の会議で改定の論点を議論
防衛省は所信表明当日の2025年10月24日、「防衛力変革推進本部」の初会合を開いた。防衛省防衛政策局防衛政策課が庶務を担うこの本部は、防衛力整備事業の進捗管理と予算執行管理、そして防衛力の抜本的強化を前倒しし国家安全保障戦略等の改定に反映させる検討を目的に掲げた。
防衛省ホームページの会議一覧には9回の会議が掲載されている。初会合(2025年10月24日)は3文書改定に向けた今後の進め方を、第2回(11月21日)は安全保障環境と2025年度補正予算を、第3回(12月18日)は新しい戦い方と防衛力強化の取組を扱った。今年に入ってからは、第4回(2月19日)人的基盤と防衛生産・技術基盤、第5回(3月4日)防衛力変革の方向性、第6回(3月19日)変革の方向性と同志国との協力、第7回(4月20日)変革の方向性と抜本的強化の実現に向けた取組、第8回(6月9日)認知戦・戦略的コミュニケーションと経済・防衛の好循環、第9回(8月3日)同盟国との協力と現行計画の評価を議題とした。8月3日以降に開かれた会議はホームページの一覧にない。
自民党提言、NATO・韓国のGDP比3.5%を引き5年以内の変革を要求
与党側の設計図は、自民党安全保障調査会の「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」だ。提言本文は2026年6月9日付で公開され、調査会(会長・浜田靖一衆院議員)が6月24日に高市首相と木原稔官房長官に手渡した。
自民党は7月1日の党ホームページの記事で、提言がNATOや韓国が掲げる対GDP比3.5%に言及し、わが国は主体的な判断の下で防衛力強化とその裏付けとなる予算を確保し、5年以内に防衛力の変革が必要だと指摘したと紹介した。提言本文第13章「政府横断的な取組の推進」には、防衛費と並ぶ重要な項目として予見可能性を持った形で予算確保に努めるべきだとの文言が入っている。
提言は冒頭で、現行3文書策定以降、不安定な中東情勢も含め国際情勢が激動を迎えていると指摘し、わが国を守る一義的な責任はわが国自身にあるとの基本を改めて強く認識すべきだとした。政府・与党が丁寧に説明して国民の理解を得るべきだとの注文も別項目として盛り込んだ。
提言は、外交・防衛・経済・技術・情報・人材を国家安全保障を支える6つの「国力」と位置づけ、これらを連携させる政府横断的なアプローチを求めた。13章のうち「わが国自身の防衛努力」の章は、人工知能(AI)を活用した迅速な意思決定、無人アセットの大量運用、スタンド・オフ防衛能力・反撃能力のさらなる強化、複合攻撃に対する防空能力、宇宙・サイバー・電磁波領域の統合作戦、太平洋・海上交通路の防衛、継戦能力の確保を7つの課題に挙げた。